ここ数年
「若者の〇〇離れ」
というものが散見されるようになってきています。
もちろん要因は一つではないでしょうが、
そのうちの一つに含まれそうなこととして、
「大学進学率の向上」
が挙げられるのではないかと(個人的には)思っています。
今回結論として述べたいことは、
大学教育によって
『疑う』という技術(批判的思考)を身につける
↓
安易に騙されないような知恵を身につけることができている
↓
結果的に「若者の〇〇離れ」に繋がっている
ということです。
ここからは、
なぜこのような理論になるのかを
説明していきたいと思います。
大学進学率の経年変化は以下の通りになっています。
引用元
http://www.garbagenews.netarchives2014387.html
この図より読み取れることとしては、
1963年度までは大学進学率が男女合計で10%未満、
つまり10人に1人もいないということです。
1963年度の大学進学率ということは、1963年に18歳ということなので、
1945年生まれくらいの世代、つまり2021年時点で70代半ばの世代です。
その後、多少上下動がありますが、1972年度くらいまでは20%弱、
つまり、60代半ばくらいの世代までは、進学率が10人中2人未満です。
その後ぐぐっと伸びていき、2000年度くらいには40%を超え、
2008年度くらいには50%を超えてきています。
2000年度大学進学者は2021年時点で30代後半、
2008年度大学進学者は2021年時点で20代後半くらいでしょうか。
上記のように見てくると、
60代は大学進学率20%未満、70代は10%未満、
その一方で
20~30代は半数が大学に進学という
大きな差があることが分かります。
多少主観的な感覚も入ってしまいますが、
ひと昔前までの小中高までの教育は、
詰め込み式の『教科書を疑わない』教育でした。
現在では徐々に「自ら考える」教育を進めてきてはいますが、
それでも大多数の小中高は従来の詰め込み式に準じているかと思います。
一方、大学では、
世の中でFランクと言われる大学であっても、
「教科書を疑う」
「教科書に載っていない問題を提起し、それを解決する方略を考える」
ということを、
授業なりゼミ論なり卒論を通じて、
身につけさせるカリキュラムになっています。
以上より、
大学に進学して『疑う技術』を身につけた人数が多い世代は、
マスコミや新聞・広告などに安易に踊らされずに、
自らの意志で、必要なもの・不要なもの、という判断ができるようになっている
ということが言えるのではないか、と考えます。
近年、若者の「テレビ離れ」「新聞離れ」などは
まさに上記の流れのような気がします。
テレビや新聞しか情報源を持たない者の割合が減り、
ニュースや記事を「適切に疑える技術」を身につけることができている、
ということを示していると解釈ができます。
ある意味、高等教育の目的を果たしている、高等教育の効果があった、
ということを示しているということかもしれません。
可能であれば小中高でも「教科書を疑う」技術を身に付けられればいいのですが、
「教科書を疑う」には「教科書に書いてあることを理解する」ことが前提になるので、
従来通りの、小中高での「教科書を信じる勉強」もしなければなりませんし、
現時点で小中高に多くを求めすぎるのは少し難しいかもしれません。
そういう点で、大学を含めた高等教育は、
やはり世の中に必要なものだと私は信じています。
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