【英語論文読解法】学級崩壊における、学級環境の影響【トップダウン的事前知識活用読解法】

論文紹介をした英語学術論文を題材に、英語の論文を読む方法について解説をしていきたいと思います。高校生、大学生、大学院生にとっては直接役に立つと思います。また社会人にとっても、フェイクニュースがはびこる昨今、マスメディアやネットの嘘情報などに騙されないために、正しい知見を自ら理解する技術を身につけることは重要だと思います。

 

それでは、紹介した論文の要旨(abstract)の英文を読んでみたいと思います。今回の論文は以下のものになります。

 

Academic Competence, Teacher–Student Relationship, and Violence and Victimisation in Adolescents: The Classroom Climate as a Mediator.

Teresa I. Jiménez, David Moreno-Ruiz, Estefanía Estévez, Juan Evaristo Callejas-Jerónimo, Ginesa López-Crespo and Sonsoles Valdivia-Salas

Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18(3), 1163

https://www.mdpi.com/1660-4601/18/3/1163

 

論文紹介の記事はコチラ

【学習科学論文紹介】学級崩壊における、学級環境・学習環境の影響:教師の主観的な認識が結構重要(教師の責任重大?)

 

 

まず最初に少し、「読解」についての前提としての知識を説明しておきます。

 

言語理解における文章の理解には、トップダウン的な理解とボトムアップ的な理解という、二つの側面があります。

 

簡単に説明すると、トップダウン的な理解とは、「文章を読む前の事前知識的なものを用いた、予測に近い理解の方法」のことです。詳しくは後で具体的に説明します。

 

もう一方のボトムアップ的な理解とは、「文章に書かれているものを、字句通りに理解していく方法」のことです。これも後で具体的に説明します。

 

要は、「事前知識が多いほど、文章を理解するときにヒントが多い状態で読み始められるので、非常に有利に、楽に文章を理解することができる」ので、事前知識をできる限り有効活用しましょう、ということを言いたいです。

 

ということで「論文を読む」というときには、「論文とはどういうものなのか」を先に事前知識として理解しておき、その知識を最大限に有効活用すると、「本物の論文を読むことが非常に楽に簡単になる」ということをまずは知ってもらいたいと思います。

 

ですので、先に「論文とはどういうものなのか」について、簡単に説明しておきます。

 

論文とは、

 

・過去に発見・証明されていない事柄を

・科学的に正しい方法によって証明し

・その結果を報告し、

・その結果が過去の知見と矛盾なく説明できるものであることを示す

 

ということを目的とした文章のことです(研究者によって、多少定義が異なる可能性もありますが、だいたい上記の定義を間違いだという人は少ないのではないかと思います)。

 

上記は私が大学生や大学院生に論文の読み方・書き方を教えるときに使っている定型的なものになります。

 

上記の定義は、実は論文を読むとき・書くときに非常に使いやすいものになっています。というのも、論文は、上記の定義とぴったり構造が合致しているからです。

 

論文が上記の定義に基づいた文章であると仮定すると、逆に言うならば、上記の4つの内容を文章に含めれば、それは論文になる、ということになります。で、実は実際にそうなっているんです。

 

論文は基本的に、

Introduction

Methods

Results

Discussion

の4つの部分から構成されます。

 

Introductionでは、「過去に発見・証明されていない事柄」を説明し、「本論文で新たに発見・証明する内容」について説明します。

 

Methodsでは、この論文にて行う研究が、「科学的に正しい方法によって行われた」ということを説明します。

 

Resultsでは、Methodsにて説明した方法の通りに研究をして、どのような結果が得られたのか、を報告します。

 

Discussionでは、Resultsで得られたこの論文の結果が、「過去の知見と矛盾することなく、しっかりとピースにはまる感じで説明ができ」、今までの研究に対して新たな知見を加えるという貢献が適切にできていますよ、ということを説明します。

 

世の中の論文は基本的に上記の4つの部分からなっている、ということは、逆に言うならば、上記4つの部分を理解さえすれば、論文を理解できた、ということになります。また、大半の論文は、上記4つが、上記の順番で書かれていることが多いです。

 

それではこの事前知識を使って、実際に上記の論文の要旨を読んでみたいと思います。論文の要旨は、論文本体の凝縮版なので、本文の内容の通り、4つの部分が基本的に含まれます。

 

要旨全体はこちら

https://www.mdpi.com/1660-4601/18/3/1163

 

事前知識を使うと、論文(要旨も)の最初はIntroductionのはずです。そう考えると、過去に発見・証明されていない事柄を説明しようとしているはずです。

 

要旨の2文目は下記のように書かれています。

 

Although the relevance of teacher and classroom factors is well established in the literature, few studies have focused on the role of teacher perceptions in school violence and victimisation and the potential mediational role of classroom climate in this relationship.

 

Although ~ is well established ~,

~はよく確立されているが、

 

few studies have focused on …

…に注目している研究はほとんどない

 

と書いてあります。つまり、「過去に…については、十分に証明されてない」ということを言いたいのだな、ということが分かります。逆に言うなら、この発見・証明されていないことを、本論文で新たに発見・証明するのだな、ということが分かります。この部分はIntroductionだということで正しそうです。

 

 

3文目は下記のように書かれています。

 

A total of 2399 adolescents (50% girls), aged between 11 and 18 years (M = 14.65, SD = 1.78) and enrolled in five Spanish Secondary Compulsory Education schools completed measures of classroom climate, school violence towards peers and perception of peer victimisation, and their teachers informed about their academic competence and the teacher-student relationship.

 

Introductionの次には、Methodsが来ると予測できます。その予測通り、この3文目はMethodsになっています。

 

A total of 2399 adolescents ~ completed measures of …

全部で2399人の青年(~)が、…の測定を完了させた

 

and their teachers informed about …

 

それと、彼らの教師が、…について知らせた

 

…のところは直訳でいいかと思います。…のところは、生徒に行わせたアンケートの内容と、教師に行わせたアンケートの内容が入っているはずです。

 

つまりこの論文では、生徒と教師にアンケートをして、そのデータを使う研究を行うのだな、ということが分かります。

 

 

4文目・5文目を見てみましょう。

 

Correlational analyses revealed that whereas academic competence perceived by the teacher was negatively related to overt violence and victimisation, its relationship with pure relational violence was positive.

 

Structural equation modelling analyses showed that variables of classroom climate (involvement, affiliation, and teacher support) perceived by the students functioned as partial mediators between teacher perceptions of academic competence and of teacher-student relationship and violence and victimisation.

 

この二つの文は、非常に複雑な内容が書かれていますが、まずはそれぞれの文頭部分を見てみますと、

 

4文目

Correlational analyses revealed that …

相関分析は、…ということを明らかにしました

 

5文目

Structural equation modelling analyses showed that …

構造方程式モデリング分析は、…ということを示しました

 

相関分析、構造方程式モデリング、というのは、どちらも統計によるデータ解析手法の名前です。つまりこの2つの文は、「とある統計分析手法を使ってデータを解析したところ、こういう結果が得られました」ということを書いています。つまり、この2文はResultsである、ということが分かります。専門用語や難しい語が並んでいますが、ほとんど直訳で意味的な理解はだいたいできそうです。

 

 

6文目は、事前知識から予測するのは少し難しいかもしれません。

 

In the mediational model, teacher perception of academic competence acted as a direct protective factor against violence and victimisation, and teacher perception of teacher-student relationship acted as a direct risk for violence, as well as an indirect protective factor through classroom climate for victimisation.

 

複雑な英語の長文を理解したいときは、「述語」もしくは「動詞」の部分を見つけるのが重要になります。この6文目は、2つの文に分けられて、それぞれの文の「述語」「動詞」がactedになっています。

 

1つ目

teacher perception of academic competence acted as a direct protective factor against violence and victimisation,

 

2つ目

and teacher perception of teacher-student relationship acted as a direct risk for violence, as well as an indirect protective factor through classroom climate for victimisation.

 

どちらも、

 

… acted as ~

…が、~として働いていた

 

という意味になっています。

 

例として1つ目の方を直訳してみると、

 

teacher perception of academic competenceが、

a direct protective factor against violence and victimisationとして

働いていた

 

つまり、

 

教師の学習能力の認識が、

暴力や被害に対する 直接的な保護的要因として

働いていた

 

ということになります。意味的にもう少し分かりやすく言い直すと、

 

教師が生徒の学習能力を正しく認識できることが、

その生徒の暴力や被害を直接的に減らすことができる要因になった

 

という感じでしょうか。(かなりの意訳を含んでいます)

 

この文は明示的ではないですが、アンケートデータの統計的な分析結果から、こういう結果になった、という文脈で説明をしていますので、この文もResultsと考えていいでしょう。

 

 

それでは最後の文です。

 

The interpretation of these results points to the importance of the teacher’s subjective perceptions in the prevention of violence and victimisation problems and their practical implications for the classroom climate perceived by students.

 

事前知識的には、最後の文、及びResultsの後ろの文ということで、Discussion的な内容の文になっているはず、と予測ができます。

 

実際に文頭を見ると、

 

The interpretation of these results …

これらの結果の解釈は…

 

と書いてあるので、この文自体がResultsではなく、Resultsを受けてのDiscussionであることが推測できます。さらには、「these results」これらの結果、と書かれていることから、この文の前の複数の文がResultsであることも確認できます。

 

この文も内容が難しい部分がありますが、結果が正しく理解できていれば、その結果を受けてのinterpretation、解釈になっているので、予測・推測しながら理解することができるはずです。

 

 

簡易的な説明が多く、詳細まで解説はし切れていませんが、「事前知識」としての「論文というものはどういうものか」という知識を使って、実際の英語論文の要旨を読む方法について解説してみました。

 

今後もこのような形で、本物の英語論文の読み方について、解説をする記事を書いていけたらと思っています。

 

質問等ありましたら、コメント等で知らせていただけたら、可能な範囲で回答・追記してみたいと思います。

 

論文紹介へのリンク

 

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本記事で解説した論文の記事はコチラ

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