本記事では、
数学の学習意欲に、数学に対する不安が影響するのかどうか、
についてのメタアナリシスによる研究論文の紹介をします。
Relations Between Students’ Mathematics Anxiety and Motivation to Learn Mathematics: a Meta-Analysis
Qian Li, Hyeree Cho, Jimena Cosso & Yukiko Maeda
Educational Psychology Review volume 33, pages1017–1049 (2021)
https://link.springer.com/article/10.1007/s10648-020-09589-z
研究目的
幼稚園児から高校生までの生徒の数学学習意欲と
数学不安との関連を調べ,
異なる意欲測定法,数学不安の次元,生徒の発達段階,文化的背景など,
潜在的な調整要因の効果を検討。
研究方法
メタアナリシスによるシステマティックレビュー。
73の論文(80の独立したサンプル,合計N = 95,872人の子ども)を対象。
研究結果
生徒の数学への動機づけと数学的不安との間には,
中程度の負の相関(r = – 0.42)があった。
また、数学不安と能力信念(自己効力感、自己概念)との相関は、
数学不安と価値信念(内在的価値、達成価値)との相関よりも強かった。
一方、全体の効果の大きさは、数学的不安の次元、生徒の発達段階、
文化的背景に影響されない。
本研究結果を受けての感想・コメント
・メタアナリシスを用いた研究なので、
結果・結論の妥当性は高いと考えていいと思います。
・「数学の問題が解けない・分からない・解答を間違える」
という「不安」が、他の科目と比べて、
数学はなぜか強いように感じます。
これは、論理的に解答が必ず導けるという数学の特徴によって、
正答か誤答が100%決まってしまうことによって、
誤答した際に「あなたの答えは間違いです」と100%確定してしまい、
それでショックを受けて自信をなくす、
というシステムになってしまっていることが原因かもしれません。
それが、今回のメタアナリシスでの「数学不安と能力信念」との
相関の強さに表れているのでしょう。
・本サイトでも紹介していますが、
学習科学では、学習におけるモチベーションというものが、
学業成績や達成に対して、非常に強い影響を持っていることが、
近年多くの研究で示されています
(「学習におけるモチベーションの維持が、結局最も成績を高める方法かもしれない」参照)。
よって、子どものやる気を失わせるようなことを親や教師がしない、
ということが、最も重要なことのように思います。
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