本記事では、少人数教育の効果は科目による差があるのか、
についてのメタアナリシスによる研究論文の紹介をします。
Class size effects in higher education: Differences across STEM and non-STEM fields☆
Elif Kara, Mirco Tonin, Michael Vlassopoulos
Economics of Education Review, Volume 82, 2021, 102104
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0272775721000236?via%3Dihub
研究目的
STEM分野と非STEM分野を区別して、
クラスサイズが大学生の学業成績に与える影響を推計。
研究方法
英国の大規模な高等教育機関の管理データを用いて、
25,000人の学生をサンプルとし、
すべての分野の学部1年生の7つのコホートにまたがる
190,000以上の観測データを検討。
研究結果
クラスが大きいと成績が有意に低くなる。
STEM科目(-0.11)の方が非STEM科目(-0.04)よりも大きな効果。
*STEM科目とは、
Science, Technology, Engineering, Mathmaticsといった科目のこと。
少人数クラスは社会経済的背景の低い生徒にとって特に有益。
STEM分野では能力の高い生徒と男子生徒にとって有益。
本研究結果を受けての感想・コメント
・大規模な調査なので妥当性は高そうに見えますが、
一方で統計的有意の基準が低くなりがちかも。
ただし効果量を見てるからこの点は大丈夫なはず。
・全体的には、「少人数制教育は効果あり」という主張を支持する結果。
・一方興味深いのは、「社会経済的背景の低い生徒にとって有益」というのは、
比較的学力が低めの学生の底上げに効いている、ということでしょうか。
・さらには、STEM科目では「能力の高い生徒に有益」とあることから、
少人数制教育は「低レベルを底上げする」だけではなく、
「優秀な学生をさらに伸ばす」ということにも
効果があることが示されてますね。
・「どういう特性の学生に、どれくらいの人数の教育を施せば
最も効果が高くなるか」みたいな詳細な研究が
今後行われてくると面白いですね。
・科目によって少人数教育の効果が異なるならば、
経営的資源が限られている教育現場にとっては、
より効果が見込める科目に人的資源を投入して教育効果を最大化する、
といった判断ができるようになるかもしれません。
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