本記事では、どうやったら子どもの勉強へのやる気が伸ばせるか、
についてのメタアナリシスによる研究論文の紹介をします。
本サイトの別の論文紹介にて、
という論文の説明をしましたが、その論文と繋がるものになります。
Pathways to Student Motivation: A Meta-Analysis of Antecedents of Autonomous and Controlled Motivations
Julien S. Bureau, Joshua L. Howard, Jane X. Y. Chong, Frédéric Guay
Review of Educational Research, Vol 92, Issue 1, 2022
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3102/00346543211042426?journalCode=rera
研究目的
(1)心理的欲求が自己決定的動機づけ
を予測する強さはどの程度か。
*動機づけとはやる気/モチベーションのこと。
(2)自律支援者(親または教師)が学生の心理的欲求充足や
自己決定的動機づけに関連しているか。
研究方法
144の研究、79,000人以上の学生を対象。
メタアナリシス。
研究結果
教師による子どもの自律性サポートが、
学生の欲求充足と自己決定的動機づけを予測。
上記は親の自律性サポートよりも強い。
コンピテンスは自己決定的動機付けの最もポジティブな予測因子であり、
次いで 自律性、そして関連性の順であった。
*コンピテンスとは
少々複雑な概念ですが、周囲の環境との関わりの中で、
いろいろな能力を身につけていく能力のこと。
またそのような能力を身につけられる、という自己有能感も含まれます。
*本論文の理論的な背景である
「自己決定理論(self-determination theory)」では、
自己有能感、自律性、関連性、の3点が、「(内発的)やる気」の源である、
というふうに考えています。
本研究結果を受けての感想・コメント
・メタアナリシスによる研究なので、結果に対する妥当性は高いです。
・一方、「自己決定理論」を背景とした研究であるため、
いわゆる「やる気」の側面全てを含んだものにはなっていない、
という制限があります。
・とはいえ、「教師による子どもの自律性サポート」が
子どもの勉強に対するやる気の向上に強く影響する、
特に親よりもその影響が強い、ということが明らかになったのは、
この論文の大きな学術的・社会的な貢献として評価できるのではないでしょうか。
・また「自己決定理論」における内発的やる気の源として
上げられていた3点について、
1位:コンピテンス(≒自己有能感)、2位:自律性、3位:関連性、
という順位を明確につけることができたことも、非常に面白い点だと思います。
・あくまで学術的な研究結果からの結論ですが、
子どもが自ら主体的に考えて行動を起こせるように教師や親が支援していくこと、
及び自己有能感が高まるように達成感を感じさせる支援をすること、
といった育児・教育方針が、
子どもの勉強に対するやる気を高めることにおいて、改めて正しい、
ということが示されたのだと思います。
個人的な趣味ですが、今年大学ラグビーで10回目の優勝を飾った帝京大学も、
岩出監督の「学生が主体的に考えてプレーする」という方針で指導している、
ということは有名です。
参考:https://news.goo.ne.jp/article/numberweb/sports/numberweb-851631.html
大人側の事情や感情、根性論などで頭ごなしに叱り飛ばすような、
子どものやる気を削り取るスパルタ式指導法などは、
様々な研究によって「間違い」であることが証明されてきつつあります。
このような研究結果が周知されることで、
子どもが勉強に対してやる気を高めて、
のびのびと自分の能力を伸ばしていける環境を、
しっかりと準備できる親や教員が増えていってくれることを願います。
子どもの成績は「やる気」が最も影響が強い、
という内容の論文紹介記事はこちら
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