本記事では、勉強をゲーム化すると、学習効果が高く成績が上がる、
という結果を示したメタアナリシスによる研究論文の紹介をします。
Effects of Gamification on Behavioral Change in Education: A Meta-Analysis
Jihoon Kim, Darla M Castelli
Int J Environ Res Public Health, 2021 Mar 29;18(7):3550.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8037535/
研究目的
ゲーミフィケーションによって、
学生の学習に関する成績向上効果を定量化すること。
*ゲーミフィケーションとは、ゲームデザイン要素やゲームの原則を
ゲーム以外の物事に応用することです(wikipedia参照)。
今回の論文では、学生の学習をゲーム化して、
その学習成果を調べた論文を集めてメタアナリシスを行った、
ということになります。
研究方法
以下の条件の論文を検索してデータとして用いた:
(a) 2010年から2019年の間に実施された査読付き論文
(b) 実験的対照デザインを用いた論文
(c) ゲーミフィケーション要素を含む
(d) 教育の場を想定したもの
PRISMAベースでの厳しい選定の結果、
最終的に18の論文をメタアナリシスによって分析。
*PRISMA=the Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses
レビュー及びメタアナリシスの厳格な手法として確立されたデータ収集方法のこと。
研究結果
ゲーム化したことによる学習成果は、
統計的に有意、かつ中程度の正の効果量を持って示された。
つまり、ゲーム化をしなかった学習条件と比べて、
ゲーム化はなかなかの学習効果の向上が見られた、ということ。
特に、小学校・中学校・高校の学生よりも、
大学以降の高等教育での学習効果がより高かった。
また、20週間といった長期のゲーム化学習よりも、
短期(1日とか1週間未満)のゲーム化学習の方が、
学習効果が高いことが示された。
1年を超える超長期のゲーム化学習は、負の相関を示した。
つまり、超長期のゲーム化学習は
効果がマイナス方向に出る、ということ。
本研究結果を受けての感想・コメント
・単一の実験論文ではなく、メタアナリシスなので、
非常に信頼性・妥当性が高い研究結果だと言えると思います。
・直感的にも、勉強がゲームだったら、
誰でも勉強したい、って思うだろうなぁ、と思います。
やはり楽しく学べるというのが、最高の勉強だなと思います。
・ゲーム化の際、例えば「レベルアップ!」とか、
「クエストクリア!」といった形で、
学生の学習に対する達成度合いを目に見える形で評価する、
という手法が多く採られていますが、
これは以前紹介した下記の論文との結果とも整合性を持ちます。
加えて、これも以前紹介した論文ですが、
子どもの「やる気」にはコンピテンスや自己有能感、
という側面も大きく関与してきます。
レベルアップ・クエストクリア、によって、
自己成長、自己有能感が高められるのかもしれません。
【学習科学論文紹介】子どもの勉強への「やる気」を向上させる方法(メタアナリシス)【信頼性・根拠のある育児・子育て・教育】
結局は子どもに「勉強したくない」と思わせたら負け、
ということなのだろうと思います。
これもまた以前の論文ですが、
結局は子どもの「やる気」をいかに引き出すか、
ということが、最も重要な周囲の親や教員の役目、
ということになるのだと思います。
・現在メタバース、といった技術の開発が世界中で進んでいます。
教育や学習のゲーム化にとって、大きな影響を及ぼしそうです。
子どもが楽しくのびのびとその能力を開花させていける環境が、
しっかりと整備されていくことを強く願います。
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