本記事では、マインドフルネスに基づく短時間トレーニングが、
ネガティブな感情の抑制に対して効果がある、という結果を示した
メタアナリシスによる研究論文の紹介をします。
以前の記事で、学生のメンタルヘルスにマインドフルネスが効く、
という論文を紹介したので、その流れでこの論文を紹介してみます。
【学習科学論文紹介】「マインドフルネス」は、学生のストレスや不安を抑える効果あり(科学的な検証です)【信頼性・根拠のある育児・子育て・教育】
Brief mindfulness training for negative affectivity: A systematic review and meta-analysis
Maya C Schumer, Emily K Lindsay, J David Creswell
J Consult Clin Psychol. 2018 Jul;86(7):569-583.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6441958/
研究目的
短時間のマインドフルネス・トレーニングの、
ネガティブ感情の低下への効果が信頼性を高く持って存在するかどうかを
評価すること。
特にマインドフルネスに基づくトレーニングの効果についての研究が、
近年ではRandomized Controlled Trial (RCT、ランダム化比較試験)という、
信頼性・妥当性の高い方法論で行われてきているので、
その結果を用いてメタアナリシスを行うことで、
より信頼性の高い結論が導けるのではないか、
という目的でのメタアナリシスになっています。
研究方法
否定的情動(例:うつ、反芻、不安、ストレス)を評価する、
短時間マインドフルネストレーニングによるRCT研究を選定。
瞑想経験のない参加者(女性64.64%、平均年齢24.62歳)
5,489名を含む、65件のRCT研究が対象。
研究結果
マインドフルネスを含まないトレーニングと比較して、
短時間のマインドフルネス・トレーニングは、
ネガティブな感情の低減に、小さいながらも有意な効果。
学生よりも社会人の方が効果が大きかった。
臨床サンプルと非臨床サンプルの間の差はなかった。
ただし、「出版バイアス」が存在していて、
マインドフルネス短時間トレーニングの効果は有意に減少。
*出版バイアスとは、「否定的な結果が出た研究は、
肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいという偏り」のこと。
本研究結果を受けての感想・コメント
・そもそも、RCTによる実験研究は信頼性が高めである一方、
そのRCTのみを対象としたメタアナリシスを実施しているため、
この論文の信頼性は非常に高いと言えそうです。
・マインドフルネスに基づくトレーニングは、短時間でも効果がありそうだが、
効果自体は少し小さめかも、という結論も、直感的にも納得でしょうか。
短時間のトレーニングでも、効果が小さいとは言え効果がある、
ということならば、気楽に試してみよう、という感覚で、
多くの人にお薦めしていってもいいかもしれませんね。
個人的には、「どれくらいの時間が最小で最大の効果を産むか」
というところを調べてくれるメタアナリシスが出てきてくれたら
うれしいな、と思ったりしてます(他力本願)。
・特に最近は、「世の中、気の持ちようだな」と思うことが多いです。
ある出来事に対して、ネガティブに捉えるかポジティブに捉えるか、が、
QOLに直結してる気がしますし、
精神を病んでしまうと身体にも不調が出てしまうことも多々ありますし。
ネガティブな感情を制御できる普遍的な方法が見つかってしまえば、
世の中、不幸な人が大幅に減ると思いますし、
親や教員などの大人が幸せになって精神的に余裕ができれば、
その子どもや学生・生徒への対応も余裕が出てきて、
のびのびと育っていける環境作りにもいい影響が出てくれそうです。
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