本記事では、書いて学ぶと理科・社会・算数/数学の
成績が向上する、という結果を示したメタアナリシス論文を紹介します。
The Effects of Writing on Learning in Science, Social Studies, and Mathematics: A Meta-Analysis
Steve Graham, Sharlene A. Kiuhara, Meade MacKay
Review of Educational Research 90 (2), pages 179-226.
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.3102/0034654320914744
研究目的
理科、社会科、算数/数学の教材について生徒が「書くこと」で学習が促進されるかどうか、
を明らかにすること。
研究方法
メタアナリシス(56実験)
1年生(小1)から12年生(高3)の生徒を対象とした論文で、
「書くことで学ぶ」活動が指導の一部であったもののみを対象。
天井効果が影響しそうなデータは排除。
*天井効果とは、満点を取ってしまうようなデータが多く含まれる場合、
統計解析上、正しい統計・推定ができなくなる可能性がある場合のこと。
研究結果
内容について「書くこと」は確実に成績向上効果を高めた(効果量=0.30)。
また、理科、社会、算数/数学の学習について、
小学校・中学校・高校の学習の向上にも同様に効果があった。
「書くこと」による成績向上効果は、
ライティング活動、指導、評価の特徴に影響されることはなかった。
さらに得られた効果のばらつきは、研究の質や特徴とは無関係であった。
本研究結果を受けての感想・コメント
・今回の論文はメタアナリシスを用いた研究なので、
単発実験での結果よりも信頼性が高い結果だと思われます。
・論文の選定条件も結構厳しく設定しているので、
メタアナリシスとしての厳格さ・信頼性もそれなりにありそうな気がします。
・「書く」「ライティング」といった、「書いて学ぶ」という手法で
学習がうまくいく、というのは、直感的にも賛成する人は多い気がします。
その直感が正しそうだ、という結果を示してくれたのは、面白いところかと思います。
さらには、「書く」という活動や指導の方法がどんなものでも関係なく
成績向上効果が見られた、というところを考えると、
結構学習促進効果は強そうな気がします。
また、社会科のような記憶・暗記系の要素が大きい科目だけじゃなく、
理科や算数・数学系にも「書いて学ぶ」が効果があるということは、
暗記系だけではなく、理解系の学習にも「書く」が効いている、
ということを示しているかもしれません。
・以前、学習方法についての工夫といった要因よりも、
成績向上には「やる気」が強く影響する、という論文を紹介しました。
一方、勉強方法の工夫が成績向上に役に立たない、
というわけではないことを示す研究結果も多く出ています。
今回の論文では、「書いて学ぶ」と成績が上がる、
ということが示されましたが、
だからといって「書いて勉強しろ」と頭ごなしに子どもに強制して、
子どものやる気を削いでしまったら、
それは本末転倒、成績が上がることはないのではないか、と思います。
まずは子どものやる気優先で、やる気が出てきたら、
「書いて学ぶといいらしいよ」とアドバイスしてあげる、
といった流れが理想的、となりますでしょうか。
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